そういえば中3~高2くらいの頃、
小説もそこそこ読んで語彙が増え、文章力が達者になった(と自覚していた)あの頃に
小説を書いて賞を取れるんじゃないかと自惚れていたこともあったっけなぁ。
懐かしくもふと思い出したので、覚えている限りちょいと挙げてみます。
まずひとつは「緋色の風」 タイトルからして既に中2くさいわけですが……
テーマは少年の究極の友情。
なんやかんやあって少年が世の中の不条理に見切りをつけ、自殺することを決める。
少年は最後に親友に電話をかけて学校の屋上に呼び出す。
幼い頃からずっと一緒だった親友に、自分の最期をぜひ見届けて欲しいと言う。
最期の空は快晴だった。
この世を憂いながらも、爽快な空の下、初夏の風を白いYシャツに受け、それ以上に晴れやかな顔をして少年がついに屋上から飛び降りを図ろうとしたところで
親友は焦りも取り乱しもせず、しかし引き止めようとすらせずに、逆に、それならば自分が殺してやる、と穏やかに提案をくれる。
屋上から姿が消えるまでを目に焼き付けるよりも、この手で少年の胸にナイフを刺す方が、その感触を得る方が、直接生命を絶ってやる方が、自分の記憶の中にいつまでもリアルに「少年の死」が刻み込まれて決して忘れることはないだろうから、と。
その後は直接的な表現は避けての暗転。
数年後、刑務所に服役中の描写から、親友が本当に少年を刺して究極の友情の努めを果たしたことを暗示して終わる、、というもの。
もうひとつ、「桜の誓い」
テーマは……愛憎?
愛する両親を事故で失い、心を閉ざした少年がいた。
高校にも行かずに、ただ幼い頃から好きだった場所に毎日赴いていた。
住む街をすべて見下ろせるくらいの小高い丘の上、立派な桜の木のもとに座って景色を眺めたり、本を読んだり、スケッチをしたりして過ごす日々が続いていた。
ある日、そこで一人の青年と出会う。
すべてを拒絶していた少年だったが、桜の丘で何度も会ううち次第に心を開いていく。
たっぷり時間をかけながらも2人は互いに理解を深めていき、絆を育み、やがて少年は青年に対して絶大の信頼を抱くとともに、心の拠り所、唯一の頼れる存在ともなっていた。
そんな折、少年の両親が遭った事故にどうやら青年が関わっていたらしいという噂を偶然聞いてしまう。
少年は初めはその噂に耳を塞ぎ、ありえないと思ったし、信じようともしなかったが、次第に疑いの気持ちがもたげてくるのは止めようがなかった。
やがて少年は青年に事実を問う。
それは、彼の口から直接否定してもらうことが、不安を取り除く唯一の薬となるだろうと思ったからだった。少年は青年を信じたかったからだ。
無情にも、青年はあっさり肯定した。あれは事故ではなかった。
あろうことか、青年自らの意思と殺意をもってして少年の両親の命は奪われたのだという酷い事実を打ち明けられる。
少年の父親は警察官だった。
青年の父親は犯罪者だった。
殺人を犯した青年の父親は逃走の際、少年の父親に射殺された。
抵抗に遭って危うく命を落としかねなかった場面で止むを得ず撃ったという正当防衛は理解され、正義感の強い市民から信頼された警察官の無事に誰もが安堵した。
「桜」の紋章に誓って正義を貫いたのだと言う父親は、少年の誇りだった。
一方で、たった一人の肉親を奪われた青年の心は歪んだ。
復讐の矛先はあえて父親を射殺した警察官ではなく、その息子へと向けられた。
自分が味わったのと同じ想いを、「大切な者を奪われる哀しみと苦しみ」を少年へ味あわせてやるべく、青年は彼の両親を事故を装って殺した。
桜の丘に赴いてわざわざ少年と知り合ったのは、廃人同然となった少年の様子を、やがて精神が荒みボロボロになって腐っていくさまを、間近で見届けてみたいという歪んだ好奇心からだった。
自分よりも堕ちている者を見続けていれば、自分の心が紛れるだろうとさえ思った。
しかし、情が湧いてしまった。
絆が芽生えてしまった。
警察官と犯罪者、親同士は対極の立場であったものの、
その息子達は、同じく大切な者を失った者同士、最大の哀しみを知る者同士という共通点があったからだということに、青年はいつからか気付いてはいた。
青年は少年に、自分を殺せと言う。
青年を信じ切っていた少年の心はずたずたに切り裂かれていた。
青年が無理矢理握らせたナイフをかざすことなど、到底できなかった。
「おまえは、ただの俺を殺せないだろう。
罪を告白した以上、俺はこうすることしかできない」
そう言って青年は、少年の首を素手で絞める。殺意をもって。
少年の手からナイフが滑り落とされる。
いよいよ虫の息の絶命の危機に、警察官として生きた父親の勇敢な血がついに少年を突き動かした。再びナイフを拾い上げると、少年は青年の胸をひと思いに突いた。
それは青年の狙い通りだった。
正当防衛で止むを得ず殺すしかないという、かつて彼の父親が置かれたのとまったく同じ状況を少年に与え、少年の中に流れる正義の血を信頼して、自分にナイフを突き立てさせた。
晴天の下、桜吹雪が舞う。
「俺が死んだら、おまえは泣くだろう」
青年は穏やかに微笑みながら、少年に最期にそう告げる。
本来なら憎み合うべきはずが、どちらも確かに泣いていた。
と、、書き出したらつい熱が入ってしまいましたね。
あらすじというより、さらっとかるーく小説を書いてしまったような気分ですが!
「桜の誓い」の方は、書きながら今でも切ないなぁ……と思えるくらいなんで、10代当時は大ヒット間違いなしだろう!と相当自信満々だったように思えますが。(笑)
しかし、少年の成長?あるいは友情物語のテーマが好きね!
あとどちらも”殺す”という不穏な要素が入っているにもかかわらず、晴天とか白いYシャツとか桜とか、いい具合に風が吹くとか。シーンを想像すると色合いがいちいち爽やかすぎるというかねー。
基本的に他にも、私がストーリーになぞらえて頭の中で起こしていく絵は……要するに好みのシーンというのは、どれもこれもやけに爽やかな絵になります。
そういう趣向なのでしょうね。
………あ。なんか。
「桜の誓い」を、今の自分の文章力で本気で書き起こしてみたくなってきた。